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近代文学における語り手の変容
N1literary criticism
近代文学の発展を語るうえで、語り手という存在をおいて論じることはできない。作家たちは物語を紡ぐかたわら、語りの形式そのものを絶えず問い直してきた。全知全能の語り手が物語世界を俯瞰する伝統的な手法は、近代以降、次第に相対化されていった。個人の内面を描写する技法が発達するにつれ、語り手の視点は限定的かつ主観的なものへと変化していく。こうした変容は、近代人が抱えるようになった自我の不安定さと無関係ではあるまい。一人称の語りが多用されるようになった背景には、客観的な真実の存在そのものへの懐疑があったと言えるだろう。語り手の変容を通じて、我々は近代文学が問い続けてきた人間存在の複雑さを垣間見ることができる。