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宗教現象学の視座

N1

Phenomenology of Religion

宗教現象学とは、特定の教義の真偽を問うことなく、宗教的経験そのものを記述しようとする試みにほかならない。研究者は自らの信仰の有無にかかわらず、対象となる宗教的事象に虚心に向き合うことが求められる。とはいえ、完全な価値中立性を装うことは、しばしば研究者自身の暗黙の前提を隠蔽する結果を招きかねない。聖なるものと俗なるものとの区別は、文化によって大きく異なるものの、その区別そのものが人間の経験を秩序づける働きを担っていることは看過できない。ある種の畏怖の感情を禁じ得ない体験に接したとき、人は言語化しがたい何かを感じ取るという指摘は、宗教研究者の間で広く共有されている。近代化とともに宗教は衰退すると予測されていたにもかかわらず、現代社会にあっても宗教的心性は根強く残っている。世俗化論を単純に適用するだけでは、こうした現象を説明し尽くすことはできまい。宗教現象学は、信仰の内実に即して人間存在の深層を照らし出す学問として、今なお重要な意義を有していると言えよう。