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脳科学と自由意志の問題
N1脳科学
脳科学の実験の中には、被験者が意識的に「決定した」と自覚する以前に、脳がすでにその決定に対応する準備電位を発生させていることを示すものがある。この結果は、人間の自由意志の存在に疑問を投げかけるものとして、哲学者や法学者の間で激しい論争を引き起こした。もし私たちの判断が脳の物理的過程によってあらかじめ決定されているとしたら、責任という概念まじきものは、そもそも成立しうるのかという根本的な問いが浮上する。もっとも、この種の実験結果を一足飛びに「自由意志は幻想である」という結論に結びつけるべからずと主張する研究者も少なくない。単純な運動決定と、長期的な熟慮を要する道徳的判断とを同列に論じることはできないという批判は、説得力を持つ。この論争は、脳科学の知見が深まるにつれ、ますます複雑な様相を呈しつつある。