← Back to paragraphs
記号論における恣意性の原理
N1記号論
ソシュールが確立した記号論の基本原理の一つに、「記号の恣意性」というものがある。これは、言語記号における「シニフィアン」(音や文字)と「シニフィエ」(概念)との結びつきが、必然的な根拠をもって定まっているのではなく、社会的慣習によって恣意的に定められているという原理にほかならない。同じ「犬」という動物を指す言葉が、言語によって異なるという事実は、この原理を裏付けるものと考えないものでもない。もっとも、擬音語のように、音と意味の間に一定の類似性が見られる例外もまじきものではなく、恣意性の原理を絶対視するべからずという指摘もある。それでも、この恣意性の原理をおいて、記号体系としての言語の本質を理解する糸口は見出しがたいというのが、記号論の基本的な立場である。