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ナラティブ・メディスンと臨床の物語

N1

Narrative Medicine

ナラティブ・メディスンとは、患者が語る病の経験を物語として丁寧に聴き取ることを通じて、より深い臨床実践を目指す医学教育の潮流である。従来の医学教育は、疾患を客観的な生物医学的データとして把握することに主眼を置いてきたきらいがある。しかし病を患う当人からすれば、数値化されたデータのみでは到底捉えきれない苦悩や不安が存在することは想像にかたくない。医師が患者の語りに真摯に耳を傾けることなくしては、信頼関係に基づく治療は成立し得ないと言っても過言ではない。提唱者のリタ・シャロンは、文学作品を精読する訓練が、医師の物語を読み解く能力、すなわち「物語能力」を養う上で有効であると説く。もっとも、多忙な臨床現場において、一人ひとりの患者の物語にどこまで時間を割けるかという現実的な制約も無視するわけにはいかない。それでもなお、効率性のみを追求する医療がもたらす弊害に鑑みれば、ナラティブ・メディスンの理念は医学教育の場で軽んじられてしかるべきものではない。