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修辞学における説得の技法
N1Rhetoric and Communication
アリストテレスは、説得を成立させる要素として、話し手の人柄に訴えるエトス、聴き手の感情に訴えるパトス、論理そのものに訴えるロゴスという三つの要素を挙げた。この分類は二千年以上を経た今もなお、修辞学の基礎理論として通用しており、その理論的射程の広さは驚嘆に値する。もっとも、論理的整合性さえあれば聴衆を説得できると考えるのは早計であり、いかに緻密な論証であろうとも、語り手への信頼が欠如していれば説得力を持ち得ない。政治家の演説を分析すればわかるように、聴衆の感情を揺さぶるパトスの活用は、時にロゴスの精緻さ以上に説得の帰趨を左右する。とはいえ、感情のみに訴えかける扇動的な言説は、聴衆を欺瞞に導く危険をはらんでおり、修辞学者からすればエトス・パトス・ロゴスの均衡をいかに保つかが肝要な課題となる。現代のメディア環境においては、断片化された情報が瞬時に拡散するがゆえに、旧来の修辞学の枠組みをそのまま適用することの限界も指摘されている。それでもなお、説得という営みの本質を理解する上で、アリストテレスの洞察をおいて他に有効な出発点は見当たらないと言ってよかろう。